支援方法1 母語話者参加
子どもの母語を話す支援者が教室に参加する場合、日本語話者と母語話者が連携で支援をします。連携支援の一回の授業は、母語による先行学習と日本語による学習の二つの場面から構成されます。なお、子どもLAMPによる支援授業は、子どもの通う学校の授業の予習として位置付けられます。
下記に紹介する例は、母語話者と日本語話者が連携支援を進めていったものです。
具体例 | |
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支援教科 | 国語(「大造じいさん」『国語 小5』) |
対象者 | 小学校5年生(中国語話者) 日本に来て3ヶ月。日本語がほとんどできなくて、国語などの授業の理解に極めて困難を感じている。 |
支援者 | 母語話者(LAMPメンバー、留学生) |
支援のプロセス
1 支援内容を決める
- 学校の先生と連絡を取って、国語の授業ではどのような順序で教材文の学習を進めるかを把握する。
- 教材文の長さにもよるが、学校の授業に臨んで、大体2-4週間前から、支援授業で取り組む。
2 学習資料を用意する
母語による学習材料(母語話者が担当する)
- 在籍学級で使われている教材のあらすじあるいは全文を母語に訳し、母語訳文を用意する。
- 「国語」の教科書ガイドなどを参考にして学習のポイントを把握し、母語でワークシートを作成する。例えば、大造じいさんの人物描写の部分をさがすとか、場面に応じて大造じいさんの気持ちを想像するとかの課題を前もって用意する。
日本語による学習材料(日本語話者が担当する)
- 「国語」の教科書に基づいて、子どもの日本語力に応じて、教材文の内容理解を促進するためのワークシートを作成する。
- 例えば、最初、「じいさんの名前はなんですか。」、「じいさんは()歳ですか。」「じいさんは()に行きましたか。いのしし狩り、雁狩り」などのように、簡単な言葉で答えるような質問、あるいは穴埋め式の質問、選択式の質問などを用意する。もちろん、母語での先行学習をふまえ、「なぜ大造じいさんは、残雪をいまいましく思いましたか。」の高度な思考課題も出すこともできる。
3 支援授業を行う
- 前述したように、支援授業は二つの場面で構成されている。
- 母語による先行学習場面では、主に母語話者がメインティーチャーとして、母語訳文と母語のワークシートに基づいて、母語先行学習を進める。母語話者と子どもが学習内容について、母語で十分にやりとりをする。
- 日本語による学習場面では、日本語話者がメインティーチャーとして、在籍学級で使われている教材と日本語ワークシートに基づいて、日本語での学習を進める。日本語話者と子どもが学習内容について、日本語で十分にやりとりをする。
- そして、日本語による学習では、必要に応じて母語を自由に使えることが子どもと支援者の間では共通理解されている。
連携支援の意味
母語による先行学習場面で使われる教材は、日本語による学習場面で使われる教材の母語訳文や、母語要約文である。このように、前者の学習が後者の学習と有機的に関連づけることが可能となる。詳しくいうと、以下のことになる。
- 母語による内容理解をテコとして、日本語による学習の理解度を高め、教科学習と日本語学習の促進を図ることができる。
- 在籍学級の教科学習と関連づけた母語による学習は、継続的な母語学習の機会を提供することにより、母語の保持・伸長を促進することもできる。
小学生・中学生を対象に、年間30人ぐらいの子どもへの学習支援を行っています。彼らの母語は、中国語、英語、タガログ語、韓国語等です。