教材の目的について

私たちは、より多くの、日本語を母語としない子どもたちの学習に、私たちの活動が役に立てばいいなあという気持ちから、 子どもLAMPの支援教室で使われている教材をHPにアップすることにしました。この教材をアップすることで、実際に支援を受けている子どもたちが、家で予習復習をするのはもちろん、 ご自宅が大学から遠くて、実際に支援を受けることができない子どもたちの自習や、 その子どもたちへの支援に役立てていただければと、思います。

教材の使い方について

LAMPの支援活動における母語を活用した教材

LAMPの支援活動では、母語を活用した教材として、

  • 「あらすじの母語訳」を文字化し印刷したもの
  • 「あらすじの母語訳」を音声化し録音したテープ
  • 母語で、教材文の読解課題を書いたワークシート

を活用しています。このうち2.は、日本人支援者が単独で支援を進める場合や、母語の読み書き能力が不十分な子どもを支援する場合に使います。また、3.は母語話者支援者が、母語による先行学習を行うときに利用します。

現段階ではHP上に音声教材が載せられないので、ここでは「1.あらすじの母語訳」について、その目的と使い方を説明します。

「あらすじの母語訳」の目的

ここに掲載されている、国語の教材文の「あらすじの母語訳」は、私たちが実際の支援活動で使っているものです。中国語、韓国語の母語訳がありますが、これらはすべて私たちの仲間の留学生が心を込めて作成したものです。

では、まず、外国人の子どもたちの支援において、なぜ「あらすじの母語訳」が必要なのか、その目的について説明します。

認知心理学の分野では、子どもが学ぶ際には、「これから学習する内容について、見通しをもつこと(=スキーマの形成)が大切である」といわれています。

私たちの支援活動は、「母語・日本語・教科相互育成学習」(→)のモデルにしたがって行っていますが、このモデルでは「母語は、学習内容の見通しをもたせる決め手になる」と考えられています。

つまり、「あらすじの母語訳」は、これからどんなお話の文章を読んでいくのか、子どもたちに学習の見通しをもたせることを目的として作られています。

「あらすじの母語訳」の使い方

「あらすじの母語訳」は、新しい教材文の学習に入る前に使うだけでなく、場面や段落ごとに理解を進めるときに使うこともあります。

1:新しい教材文の学習に入るときによませる

新しい教材文の学習に入るとき、「これから、こんなお話の文章を読むんだよ」と言って子どもに母語訳を手渡すと、母語の読み書きができる子どもは夢中になって読み始めます。

そして、授業に母語話者が参加している場合には、今、読んだ文章について、母語を使って、

のように、教材文の内容に関わって子どもの知識や体験を引き出すようなやりとりを豊かに行うことが大切です。

「ことばの勉強をしているのだから」「学校の授業でも聞かれるから」と何かを教え込もうとするのではなく、子どもが感じたことや考えたことを引き出しつつ、教材文が描く世界について子どもがイメージをもてるような働きかけが必要です。

2:場面や段落ごとに理解を進めるときによませる

その日に学習する場面や段落の内容について見通しをもたせたいときには、その場面や段落だけを扱った母語訳を、子どもに読ませます。

文章全体のあらすじは筋の展開をとらえるのに有効ですが、場面や段落ごとのあらすじからは、より具体的な情報を得られ、日本語による読解に役立てることができます。

「あらすじの母語訳」には、決まった使い方というものはありません。子どもたちに学習の見通しをもたせ、学習に対する子どもの興味を呼び起こすために作られているという趣旨をふまえたうえで、今後さらにいろいろな活用方法が提案されることを望みます。

また、中国語や韓国語はもちろん、タガログ語、ポルトガル語、スペイン語などの母語訳も子どもたちは必要としています。「実際の支援には関われないけれど、あらすじの母語訳だったらできる」という方の声を、心からお待ちしています。

<実例>
1:母語による学習支援の事例(pdf形式)
2:日本語による学習支援の事例(pdf形式)

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